亘理町は宮城県の南東部、仙台市から南へ26キロメートルほどのところにあります。冬は比較的あたたかく、夏は心地よい海風が暑さを和らげてくれる、とても暮らしやすいところです。
東の太平洋は黒潮が流れ、西の阿武隈高地は標高200メートル前後の丘陵地帯であり、阿武隈川が肥沃な土地をつくりました。 亘理町の面積は73.60平方キロメートルで、南北10キロメートル、東西7キロメートル。縦長の形をしており、中央部の水田地帯を住宅地が取り囲む緑豊かな田園都市です。
亘理は阿武隈川の南岸にあり、川を「渡る地」として「わたり」という地名になったといわれています。
江戸時代は、亘理伊達家の治世のもと城下町が築かれ、いまでもいたるところにその風情を見ることができます。
昭和30年(1955年)2月に、亘理町・荒浜町・吉田村・逢隈村が合併して、現在の亘理町が誕生しました。
海があり、川があり、山があり、田畑が広がる亘理町。魚介も米も野菜も、種類豊富な新鮮食材が手に入る自然環境からは、豊かな食文化が生まれました。
その最たるものが「はらこめし」!
鮭の身と卵を贅沢に使ったはらこめしは、今や宮城県民のソウルフードともいえる郷土料理です。
果物の生産も盛んです。「もういっこ」をはじめとするイチゴはもちろんのこと、リンゴやアセロラなども隠れた特産。直売所を訪れて、ぜひ旬の味を楽しんでください。
亘理町は、東日本大震災で甚大な被害を受けました。押し寄せた津波は高さ7mにもおよび、沿岸部の家々は全壊・流失してしまいました。
海岸林も例外ではありません。海岸に沿うように、生い茂っていたクロマツの林は、ほとんどがなぎ倒され、流されました。震災前は東北随一の生産量を誇ったイチゴ農家も、海沿いの土地を活用していたため、壊滅的な被害を受けています。観光客が集うエリアだった鳥の海は、商店の多くが流失。海を見渡す5階建ての「鳥の海温泉」は、2階床下まで津波が押し寄せました。
家屋も産業も失ったまちでは、雇用が減り、地域コミュニティも崩壊します。昔からのご近所付き合いが失われ、伝統や文化を後世に伝える手段がなくなってしまいました。
心が折れそうになる経験を経て、今、亘理は一歩一歩復興への道を歩んでいます。震災前の状況に戻すだけでなく、さらに魅力あるまちにするための取り組みが動き始めています。
海岸林は、地域住民とボランティアの力で植樹が進みつつあります。今は子どもの背丈ほどの細い木の集まりですが、数十年後には豊かな森が再生するでしょう。イチゴ農家は、若い世代のパワーによって復活しました。新しい栽培手法を用いて、新しい品種の生産に取り組んでいます。
津波が押し寄せた「わたり温泉鳥の海」もリニューアルオープン。開放的な露天風呂に観光客が集まり始めています。
防災や地域住民の雇用に取り組む企業の姿も見ることができます。
「コスメティック・アイーダ」(現:株式会社アイーダ)は被災した工場を再建するだけにとどまらず、災害に強い新しい工場を再建しました。
伝統や文化の伝承は「Watalis」のような新しい団体が担います。着物地を小物に再生するという亘理の文化が、地域の女性たちの手によって新しい形で継承されました。
大きな災害からフェニックスのように復活している亘理町。その姿を見て、体験する旅に出かけてみてはいかがでしょうか。
【仙台から】国道4号~国道6号で約50分
【仙台空港から】県道塩釜亘理線で約20分
【仙台から】常磐線で亘理駅まで約30分
【仙台空港から】仙台空港アクセス鉄道で名取駅まで約10分、名取駅から常磐線で亘理駅まで約20分
【東京から】東北新幹線はやぶさで仙台駅まで約90分、常磐線で亘理駅まで約30分